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燻製屋猫松のいぶりがっこができるまで【前編】

2020.04.01

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燻製屋猫松の「猫の台座」です。

私たちの商品「いぶりがっこ」の製造過程について、
過去にFacebookで投稿していた記事をスコップ用に再編集しました。
読んだ気がするな~という人も、読みやすくリニューアルしておきましたので
ぜひお読みください。

まずは前編です。

※ちなみに私たちの作ったいぶりがっこの商品名は「燻り大根漬」です。
「いぶりがっこ」ではないのは大人の事情です。

はじめに

私が初めていぶりがっこを作ったのは、2019年のことでした。
そう、実は2020年のいぶりがっこは製造2年目なのです。

2年目にも関わらずなぜ今回わざわざ記録を残したかというと、
皆さんが食べるor誰かにプレゼントする時に
ウンチクを披露してドヤってもらうことで、
愛着を感じさらに美味しく召し上がって欲しい。
もっと言うといぶりがっこ作りを通して燻製をもっと身近なものに感じて欲しいという
私の願望が溢れ出した結果、記録に残すことでまさに今、
皆さんに情報を押し売ることに成功したのです。

燻製屋猫松 いぶりがっこ

前編では全体のスケジュールと注意点についてご紹介します。
※あくまで僕の取り組みなので、
「これが絶対に正しい!いぶりがっこの唯一無二の作り方!」
というものではありません。

いぶりがっこ製造のスケジュール

【2019年】
2、8月 衛生検査及び栄養成分検査
(昨年度製造分。常温保管でも半年以上菌の繁殖が抑えられていたことを確認)
4~10月 薪集め(桜中心としつつリンゴも集めました)
8/30 大根の播種(植えた品種は香漬助【こうづけのすけ】です)
10/21~23 燻し小屋の改修工事
10月末 燻し小屋の準備(1000本吊るせるようにレイアウトを整えます)
10~11月 米糠及び漬込み原料集め
11/10~30 大根収穫
11/10~30 燻し~漬込み工程
【2020年】
1月末~2月末 大根の取出し及び洗浄
1月末~2月末 包装及び煮沸消毒
1月末~ 販売開始

それぞれの工程での注意点や気付き

衛生検査 → 検査に出すためのサンプルは複数取っておきます。
半年後や一年後の味はどうか?菌は増えていないか?ということを調べるためには、
色んな条件のサンプルを作る必要があるためです。
1年経っても衛生上は問題なかったですが、やはりできたてのものはサイコーですね!
今が旬!

薪集め → とにかく人に助けて貰います。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 薪集め

いぶりがっこは薪を買って製造するとコストが合いません。
普段から「切る予定の木はありませんか?」とか「いぶりがっこを作りたいんです!」と声を掛けておくことが重要でした。
私は桜とリンゴにこだわりましたが、広葉樹であればナラでもOKです。
ケヤキは臭いがキツいので広葉樹とは言えオススメしません。
それでも手元にケヤキが来てしまったら、
薪ストーブを使っているご家庭に薪のトレードをお願いしてみるのも面白いですよ。
物々交換はいつの時代でも楽しい。

大根の播種 → 8月後半であれば末でなくとも問題ありません。
末になったのはたまたまでした。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 大根の播種

雨後の畑という最悪のコンディションでしたが、木村功さん(鏡田ファーミング)と「こえぇ!(東北の方言でツライの意味)」と声を掛け合いながら植えました。
相当足腰に効くので、この日はスクワットをしなくても良いです。得した気分です。
大根の品種は「香漬助」を使うのが良いです。
2019年に実験で作った青首大根「そうぶとり」のいぶりがっこは
芯に辛味が残りました。つまりダメ。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 大根の播種
写真の左側がそうぶとり、右側が香漬助です。

燻し小屋の工事 → 車庫を燻し小屋として使用しているのですが、
2019年度は300本を吊るすのが限界でした。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 燻し小屋

これを何とか1,000本/回燻せるようにしたくて小屋の改修工事もしました。
もうちょっと間隔は狭くしておけば良かったなあ。という反省はあるものの、
目標としていた1,000本以上を吊るすことができていたので概ね満足です。

米糠及び漬込み原料集め → 漬込み原料で集めにくいものは、
「米糠とザラメ糖、漬物袋」の3種類でした。
普段は畑に捨てるほどある米糠ですが、この時期だけは取り合いとなります。
遅くとも新米が出たタイミングでは入手を始めたいところです。
ザラメもこの時期だけはスーパーで品切れていたりします。漬物袋も同じですね。
何でも早め早めだと思いました。

大根収穫 → 大根は重量野菜にカテゴライズされており、
一番大変なのは収穫(と運搬)だと言われています。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 大根収穫

燻製屋猫松 いぶりがっこ 大根収穫

機械で抜くことができないので、一緒に収穫してくれる仲間を募る一方で、
とにかく身体も鍛えて万全の体制で挑みましょう。
大根は抜いたあとに泥を落とすので、防水グローブも用意しておきます。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 大根収穫

とにかく重量があるので洗い場と畑は近い方がいいですね。
播種の際にこの時の動線まで考えていれば完璧です。

燻し~漬込み工程 → 燻しは1回4日間です。
温度調整で水出しを高速化させ2~3日に短縮することができる、
と噂で聞いて実験してみましたが、色づきを良くするには4日必要でした。
何でも鵜呑みにしてはならない。
良いものを作りたければ横着はできないということを痛感しました。

大根の取出し&洗浄 → 糠汁を先に処理すれば防寒グローブが使えます!

燻製屋猫松 いぶりがっこ 大根収穫

これは新発見でした。柄杓で糠汁を掬うことで劇的にストレスが減ります。
2019年の防寒グローブなしでの取り出し作業は地獄でした。
映画タイタニックで海に落ちたジャックが
「身体をナイフで刺されているみたいだ」と言っていたことを、そんなわけあるかい。
と少年猫の台座は見ていましたが、今になって彼の気持ちがわかりました。
取り出して糠をキレイに落とした後の大根は両端を切り2晩置きます。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 大根収穫

大根内部に溜まったガスを排出させるためです。

包装及び煮沸消毒 → 真空包装は真空率が高ければ高いほど良いです。
理想は99.9%です。好気性細菌を不活性にさせるためです。
煮沸消毒は真空パック後、温度計を指した大鍋で80~85℃にて30分火にかけます。

燻製屋猫松 いぶりがっこ 包装及び煮沸消毒

熱湯処理後は冷水に30分浸す工程になります。

おわりに

やってみて僕が思うことは、「いぶりがっこ大変やわ。」がまず最初にきます。
それでも来年も作ろうと思うのは、
「美味しかったよ!」とか「来年も楽しみにしてる!」という
お客さんのありがたいメッセージが嬉しいから。
そんな言葉が欲しいから、僕(私)もこれからいぶりがっこをやってみたい
という方へのメッセージとしては、
「たくさんの人に助けてもらいましょう!」
これだけです。
いぶりがっこだけに限った話ではないですが、
いぶりがっこは特に自分一人の力だけでは完結できなかったなと僕は思っています。
ですが、だからこそ多くの人と繋がれるし、一緒に進めていく楽しさもありました。
これはお金では買えない大切なものでした(ドヤァ!)

虹の写真

後編では燻し小屋の改修ともっと突っ込んだ注意的をお届けします。
お楽しみに!

【燻製屋 猫松】
https://www.nekomatsu.jp/

【この記事を書いたライター】

猫の台座

猫の台座

今日より早い日はないをモットーに情熱の赴くままに活動しています。移住して見つけた鹿角ならではのHow toを発信していきたいです。家にいる間はだいたい台座業をしています。