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世界をとびまわる鹿角在住88歳、フリーカメラマン
2019.02.06
十和田図書館を取材したときに、
たまたまのタイミングでおこなわれていた小さな写真展。
「その写真家さん、88歳なんですよ。世界中いろんなところに行ったりして、
すごくアクティブな方」と、図書館の職員さん。
「88歳」「世界中」、そんなキーワードに惹かれて、
その場で職員さんから川口さんへ取材依頼をつなげてもらった。
秋田県鹿角市在住のフリーカメラマン、川口 仁人(かわぐち まさと)さん。
「たったの88歳です」と笑う川口さんは東京で35年をすごし、
鹿角にUターンしてから30年。
川口さんがカメラマンとして動き始めたのは定年退職後のこと。
「父が教師だったこともあって、裕福な家庭でした。
中学時代には父のカメラで遊んでいたんです」
川口さんの年齢を考えると、その当時、家にカメラがあるというのはめずらしい。
カメラで遊びながら過ごした青春時代、川口さんは
「あきたびじょん」の写真で有名な木村伊兵衛氏の作品に魅了される。
(「あきたびじょん」のポスター。この写真は木村伊兵衛氏の写真集「秋田」から選ばれたもの)
「僕のなかで師匠と呼べるのは木村伊兵衛ただひとり。
彼の撮った写真を超えることはできないから、僕は今でも人の写真は撮らないんです」
’定年退職後のカメラ’というと、多くの人が趣味の範囲を想像する。
だけど、川口さんは趣味では終わらなかった。
秋田県の美術展で奨励賞、東北二科展でも受賞、その翌年には二科展本選で入賞。
そんな川口さんの活躍をみた某カメラメーカーと、
写真家の秋山庄太郎氏が推薦人となり、
プロの団体へ所属することになったのだ。
「画商をやっていたので、どうしても絵の構図がベースにあるんです。
だから、僕の撮る写真はほかの写真家さんとちょっと違う(笑)」
そういって見せてくれた川口さん撮影の写真は、どれもどことなくファンタジック。
(小岩井農場)
(小坂マリア園)
もちろん鹿角に限ったことではないけれど、
「住んでいる町の美しさ」に気づけるって、じつはとても幸せなことだ。
そして、鹿角市のお祭り’花輪ばやし’を世界遺産にするべく
ユネスコへ申請した際の写真も、川口さんが撮影をしている。
川口さんの撮影スポットは鹿角市内にとどまらず、その規模はなんと’世界中’。
これまで37カ国(しかも、マイナーな国を中心に!)回ってきた。
カナダ、アラスカ、スウェーデンと、北極圏にまでカメラを持って足を運ぶ。
「カナダにオーロラを撮りに行ったんですけど、
暗夜と白夜の堺に現れる’色つきの’オーロラが撮りたかったんです」
美しい世界を切り取るために、世界中どこまでも行く川口さん。
じつは根っからの「深掘り好き」である。
カメラマンとして活動する傍ら、
「大湯ストーンサークル」のガイドも努めている川口さんは、
昭和26年におこなわれた大湯遺跡の本格的な学術調査も手伝った。
(大湯遺跡は昭和6年に発見、昭和26・27年に学術調査を実施)
「中途半端が嫌で、教わるなら一流の人に教わるし、とことん調べます」
インカ帝国へ行ったときには、数日の滞在予定が2週間になり、
長老と呼ばれる人とも打ち解け、
ふつうは入れない場所まで案内をしてもらったというんだから、
筋金入りの深掘り好きだ。
この日は写真の話、遺跡の話、鹿角の話…
記事には書ききれないほどの「深掘り話」を聞かせてもらった。
少年のような心を持った88歳のカメラマンは、
これからどんなふうに世界を切り取っていくんだろう。
【この記事を書いたライター】
スコップ編集部
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